確定申告歴10年以上・簿記資格保有の筆者が、確定申告で使える、簿記の種類や仕組みなどの基礎知識を分かりやすく紹介します。
簿記が分かると、例年の確定申告の書類作成に自信が持て、ちょっとした例外的な支出や収入があった時も対応しやすくなり、今お使いの会計ソフトもより使いやすくなります。
確定申告が必要かどうか知りたい人は「副業でも確定申告は必要?申告ルールと注意点をチェック」も読んでみてね。確定申告の注意点、2021年からの確定申告のルールも分かります。
もくじ
確定申告する時に知っていると便利な知識
確定申告をする上で、知っていると便利なのは「簿記」の知識です。
簿記を知らなくても、会計ソフトを使えば比較的簡単に確定申告書類を作ることはできます。しかし、簿記の知識がないと、
「この出費はどの勘定科目がいいだろう?」
など迷うことがあります。
また、個人事業主が確定申告するのであれば、「家事按分」や「事業主貸」「事業主借」といった個人事業主に関係が深い勘定科目について詳しく知っておくことも必要です。
とにかく、簿記の知識があるとないでは確定申告のしやすさは段違いに変わります。
リアルな日商簿記取得の体験談+合格のコツはこちら↓↓
就職したい女性が取るべき資格とは?定番の簿記やはり食える!【シングルマザーの独り言】
単式簿記と複式簿記
簿記には単式簿記と複式簿記があります。
確定申告で知っておきたいのは複式簿記です。
単式簿記はいわば小遣い帳や家計簿のような簡単なものですが、複式簿記では会社で使っているのと同じ本格的な会計処理ができます。
単式簿記の例
単式簿記は、ごく簡単な記帳方法なので、日商簿記のような資格がなくても、経理の経験がなくても分かります。
単式簿記は、以下のようなイメージになります。
月日 | 項目 | 摘要 | 入金 | 出金 | 残高 |
3,500 | |||||
12月1日 | 交通費 | ○○行き | 300 | 3,200 | |
12月5日 | 売上 | 〇商店 | 5,000 | 8,200 | |
12月13日 | 仕入 | △商事 | 2,000 | 6,200 |
12月1日/交通費/○○行き/300
は、12月1日に300円を交通費として使ったことを示します。
↓↓白色申告なら単式簿記でイケます。少額の利益なら、単純で簡単な白色申告もアリかも。
副業・フリーランスの白色申告のやり方紹介!確定申告に必要な書類や手続き方法は?
複式簿記の例
複式簿記で上記の単式簿記の内容を示します。
月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
12月1日 | 交通費 | 300 | 現金 | 300 | ○○行き |
12月5日 | 現金 | 5,000 | 売上 | 5,000 | 〇商店 |
12月13日 | 仕入(商品) | 2,000 | 現金 | 2,000 | △商事 |
借方、貸方という考え方でお金の流れを記していくのが複式簿記です。
12月1日/交通費 300/ 現金 300/○○行き
は、交通費が300円分発生し、現金が300円減ったことを示します。
単式簿記との違いは、お金を使った場合にその出金によって何を手に入れたか(モノが増えた、サービスを受けた)分かる点です。
例えば、12月1日の交通費と12月13日の商品仕入れはどちらもお金が減っていますが、
- 一方は交通費として消費し
- もう一方はお金は減ったものの「商品」が増えた
と現金が減った原因(対価で得たもの)が異なります。
お金を消費する代わりに同じ価値のモノを手に入れたことを示すことができるのが、複式簿記の特徴の一つです。
12月13日の例では、
「2,000円の現金が減り、(その代わり)2,000円分の商品を手に入れました」という意味です。
複式簿記では、お金を使った場合でも「お金が消費されて消える」のではなく「お金と何かと交換する」と考えます。
複式簿記と仕訳について
複式簿記は、たくさんの「勘定科目」を使って記帳していきます。
勘定科目とは「売上」「仕入」「旅費交通費」「消耗品費」など、お金を分類するための項目です。
それぞれの勘定科目はその増減によって借方、貸方に分けられます。
一つの取引を借方、貸方に分けて帳簿に記録することを「仕訳」と言います。
仕訳の基本ルール
仕訳の基本ルールは、
です。
例えば、現金が増えた時は
月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
12月5日 | 現金 | 5,000 | 売上 | 5,000 | 〇商店 |
と、現金が借方(左)に。反対側の「売上」は現金が増えた原因を示しています。
また、反対に現金が減った時は、
月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
12月1日 | 交通費 | 300 | 現金 | 300 | ○○行き |
と、現金は貸方へ行きます。同じく反対側は現金が減った原因です。
仕訳のイメージを掴む
前述の現金の流れから、他の仕訳のイメージも何となく掴んでいきましょう。
先ほどの仕訳をもとにすると、さまざまな仕訳の流れもイメージできます。
例えば、借入金(お金を借りた)場合、
月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
1月10日 | 現金 | 300 | 借入金 | 300 |
現金は増えるので借方、すると自然に「借入金」は貸方になります。つまり、
ことが分かります。それに伴い、その逆の
ことになります。
また、起業にあたり、現金を出資して資本金に当てた場合、
月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
10月10日 | 現金 | 300 | 資本金 | 300 |
となります。
と考えておくのもアリです。
複式簿記で見る取引の流れ
複式簿記では、商品の売買の流れまで追うことができるようになっています。
例として、最初に使った表を使って、取引がどのように進んでいくか、複式簿記で表します。
月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
12月1日 | 交通費 | 300 | 現金 | 300 | ○○行き |
12月5日 | 現金 | 5,000 | 売上 | 5,000 | 〇商店 |
12月13日 | 仕入(商品) | 2,000 | 現金 | 2,000 | △商事 |
この表では、12月13日に商品を仕入れたところで終わっていますが、仕入れた商品はいずれ販売されます。
複式簿記では、
を、詳しく記録しておくことができます。
例として、その後の売買の流れを「分記法」※で仕訳しました。
商品を2,000円で仕入れた後、3,000円で売って1,000円の儲けが出た様子が分かります。
月日 | 借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 | 摘要 |
12月13日 | 商品 | 2,000 | 現金 | 2,000 | △商事 |
12月15日 | 現金 | 3,000 | 商品 | 2,000 | 〇商店 |
商品売買益 | 1,000 |
※簿記では、分記法と三分法という仕訳の方法があります。分記法では商品の売買を「商品」という勘定科目を使い、三分法では「仕入(買掛金)」「売上(売掛金)」「繰越商品」で仕訳します。
2,000円の「商品」は、12月15日には「現金」3,000円に変わりました。
ただし「商品」はもともと2,000円だったので、2,000円分しか仕訳できません。
単式簿記のように、何もかも全部ひっくるめて「出金」で処理してしまうと、お金の動きと自社が持っている財産、資産の動きが読めません。
複式簿記では、お金の動きだけでなく会社にあるモノの動きまで読むことができるのです。
複式簿記でお金とモノの流れをもっと深く知ろう
個人が確定申告する場合でも、大体の人は会計ソフトを使いますが、簿記の基礎を知っておくと会計ソフト入力もより簡単になり、さらにできた書類の意味も分かりやすくなります。
単式簿記と複式簿記では、複式簿記の方がより詳しいお金やモノの流れを知ることができます。
複式簿記が分かると、決算書が分かり、さらに経営状況への理解が深まり、戦略も立てやすくなります。
また、複式簿記で確定申告するなら、節税効果の高い「青色申告」も可能です。